香りが良く、適度な酸味があるため、料理などに使われている柚子は可愛い花を咲かせます。ここでは、柚子の基本情報や花を咲かす時期、収穫した柚子の活用法などについてご紹介いたします。
「柚子」の基礎知識
柚子はどんな植物なのでしょうか。まずは、基礎知識を確認してみましょう。
柚子の基本情報
柚子はミカン科ミカン属の植物。常緑性の低木で、多くの植物と同じように花を咲かせた後に実をつけます。原産は中国だと考えられていて、中国語の柚(ユ)が名前の由来であると考えられています。
柚子と呼ばれるようになった理由は諸説ありますが、中国語で実を意味する「ズ」が付いたという説やすっぱいことから柚の酢と呼ばれるようになったという説が有力でしょう。
なお、柚子は日本で多数消費されていることから英語でも「yuzu」と呼ばれています。
柚子の歴史
詳しい情報はありませんが、柚子はかなり昔に日本に渡来したと言われています。奈良時代や平安時代には柚子が栽培されていたと考えられていることからも、長年に渡って日本で育てられていることがわかるでしょう。
山口県や徳島県には、柚子の原生林も存在します。
柚子の種類
柚子は大きく三種類に分けられます。
本柚子
本柚子は中国で生まれた柚子です。日本では最も良く出回っていて、本柚子の中でも種のない多田錦が人気です。
花柚子
花柚子は日本で生まれたと言われていますが、詳細はわかっていません。本柚子と比べて実が小さく、香りも薄いため、料理の香りづけに使われることが多いです。
獅子柚子
獅子柚子は「オニユ」や「ジャガタラユ」とも呼ばれている種類です。他の種類の柚子と比べて果実が非常に大きく0.5kg〜1.0kgまで成長します。皮はジャムなどに加工されますが、観賞用として育てられることも珍しくありません。
柚子の花言葉
柚子の花言葉は「健康美」や「けがれなき人」です。健康美は黄色く、さわやかな香りがする実をつけることに由来していて、けがれなき人は真っ白の美しい花を咲かせることに由来していると考えられます。
柚子に含まれる成分
柚子には健康や美容に良い成分が豊富に配合されています。柚子に含まれる代表的な成分に期待できる効能や効果を確認してみましょう。
ビタミンC
柚子にはビタミンCが豊富です。ビタミンCにはコラーゲンの生成を促進する働きがあり、皮膚や粘膜の健康維持に欠かせません。また、ビタミンCには免疫力を高めたり、鉄の吸収を良くしたりする働きもあります。
ビタミンCの影響で免疫力が上がり、鉄がスムーズに吸収されれば、感染症にかかったり、貧血になったりしにくいでしょう。さらに、ビタミンCには強い抗酸化作用があります。抗酸化作用で体の老化を進めたり、細胞にダメージを与えたりする活性酸素の働きを抑えられたりすると、動脈硬化などの病気の予防につながります。
活性酸素は肌の老化も進行させるため、柚子でビタミンCを摂れば、アンチエイジングにも役立ってくれるでしょう。ビタミンCにはメラニン色素の働きを抑える作用もあるので、シミの予防も期待できます。
クエン酸
柚子にはクエン酸も豊富です。クエン酸とは、酸味成分の一種です。柚子のほかにレモンやオレンジなどの柑橘系の果実に含まれています。クエン酸には疲労回復効果があると言われています。よって、疲れた時に柚子を摂ると、体が落ち着くことが多いです。
また、クエン酸はミネラルの吸収率を高める働きもしています。健康維持に不可欠なミネラルは吸収されにくいため、日本人はカルシウムや鉄などのミネラルが不足しがちです。
クエン酸はミネラルの吸収率を上げるため、ミネラル不足に陥っている人は柚子を摂ると、体調の回復を期待できます。特に、熱中症などでミネラルのバランスが崩れている時はクエン酸を含んだ柚子が役立ってくれるでしょう。
柚子の育て方
柚子は比較的、栽培が簡単な柑橘類の中でも育てやすい植物です。柑橘類にしては珍しく、約−7度まで耐寒性があるため、風よけや幹の防寒をすると、青森県などの東北地方でも栽培できます。
これまでは、枝に鋭く長い棘がある品種が主流でしたが、最近は棘がない品種も栽培されえいるため、子供がいる家庭などでも育てやすいでしょう。
ここからは、柚子の栽培方法について簡単に解説いたします。
苗選び
園芸初心者はホームセンターや園芸店などで苗を購入するのがおすすめです。売られている苗はほとんどが接ぎ木で、病気に強いため、初心者でも結実を目指せます。苗は接ぎ木部分が目立たず、どっしりとしたものを選びましょう。
接ぎ木部分を軽く揺らしてもグラグラとしないくらい幹が太く、節が詰まって葉が多いものは良い苗です。反対に、葉に病害虫の形跡が見られたり、幹が細かったりする苗は上手く育たない可能性があるため、避けた方が良いでしょう。
なお、実付き苗を購入する場合は、欲張らずに実が少ない苗を選ぶのがおすすめです。実が多い苗は幹や根などに負担がかかっているため、植え付け後に枯れてしまう可能性があります。
植え付け
柚子の苗の植え付けは3月から4月に行います。伸びすぎて傷んだ根は取り除き、根を崩さないように植え付け穴に入れましょう。接ぎ木苗の場合は、接ぎ木部分が土に埋もれないように注意してください。
なお、柚子は比較的どんな土質でも育ちます。水はけや保水性が悪い土地でも、腐葉土を入れたり、敷き藁を敷いたりすると、根付いてくれるでしょう。
栽培管理
柚子は水を好みます。乾燥すると枯れてしまうことがあるため、水やりは欠かさないようにしましょう。特に、木が成長する夏は高温になり、乾燥しやすいため、朝と夕にたっぷりと水やりをすることが大切です。
追肥は3月と10月に行います。完熟たい肥や液肥などの即効性がある肥料を適量与えましょう。花が咲いた後に葉の色が薄くなっている場合は、肥料が切れている可能性が高いので、即効性肥料を与えておくと安心です。
柚子に実をつけるためには剪定も必要です。柑橘類は枝がまっすぐに生えていると、実をつけにくいので、横に広がった形になるように剪定したり、誘引したりしましょう。
剪定しすぎると、木の生長に悪影響なので、木が小さい場合は2〜3年間は込み合った時に間引く程度にしておくと失敗が少ないです。
病害虫予防
柚子は他の柑橘類と比べて病気に強いですが、黒点病や黒星病などが出やすいです。病気を防ぎたい人はあらかじめ、薬剤を散布しておくと良いでしょう。
害虫では、アゲハチョウの幼虫やハダニなどに注意が必要です。アゲハチョウの幼虫は葉を食害するため、こまめに葉を観察し、食害痕があったら、幼虫を見つけて対処しましょう。
ハダニは夏の暑い時期に発生します。被害が気になる場合は、葉水をしたり、薬剤を散布したりして発生を予防しましょう。
もし柚子の花が思うように咲かないという場合は、柚子の花が咲かない時の対処法の記事をご覧ください。
柚子の花が咲く時期は?
順調に柚子が育つと5月ごろに花が咲き始めます。花は6月ごろまで続き、花が落ちた後に実がつきます。柚子の花は同じ柑橘類のミカンやデコポンなどととても良く似ている白くて小さい花です。
花からはさわやかな香りがするため、見た目だけでなく、香りも楽しめるでしょう。花の香りに誘われてミツバチやカナブンがやってくることも多いです。
収穫した柚子の活用法
花が落ちると、柚子に実が付き始めます。7月ごろになると、未熟な青い実が収穫できるようになりますが、黄色く色を付けたい場合は8月ごろまで待ちましょう。果実の7〜8割が黄色に変わった時がベストな収穫タイミングです。
品種や栽培地、栽培環境などによって多少差はありますが、柚子の収穫は12月ごろまで続きます。特に、10月ごろの柚子は果汁が多いため、さまざまな方法で活用できるでしょう。
なお、柚子はとてもすっぱいので、果実を生食できません。では、どうやって柚子を活用すれば良いのでしょうか。収穫した柚子の活用方法を確認していきましょう。
調味料
柚子は独特の香りと酸味があるため、調味料として活用できます。特に、搾りたての果汁や皮を使ったポン酢や柚子味噌は市販の調味料と別格の味だと人気です。
ポン酢を作りたい場合は柚子の果汁と醤油を2:3で合わせて、昆布や鰹節を入れましょう。柚子味噌を作りたい時は味噌に果汁とすりおろした皮を合わせると、美味しいです。果汁の量は好みに合わせて調整するのがおすすめです。
柚子湯
お風呂に柚子を入れて入浴すると、体が温まり、免疫力のアップを期待できると考えられています。冬至には柚子湯に入る人も多いですが、柚子を収穫できたら、頻繁に柚子湯を楽しむのも良いでしょう。
柚子を丸ごとお湯に浮かべる場合は、香りを楽しむためにたっぷりの柚子を用意しましょう。用意できる柚子が少ない時は、柚子の皮に切れ込みを入れてからお風呂に入れると、香りが広がります。
また、柚子を切ってお風呂に入れるのもおすすめです。ただし、肌が弱い人は切った柚子を入れたお風呂に入ると、ピリピリとした痛みを感じることがあるため、心配な人は切った柚子をガーゼで包んでからお風呂に入れましょう。
それでも肌が痛い場合は、柚子の果実を20〜30分かけて蒸らしてからガーゼに包めば、痛みを感じにくいです。
ジャム
柚子がたくさん収穫できたら、ジャムを作るのも良いでしょう。細く刻んだ皮と柚子の果汁に砂糖を加えて煮込むと、とろみのあるジャムが完成します。寒い日は柚子ジャムをお湯で溶かして、柚子茶を楽しむのもおすすめです。
柚子ドリンク
簡単に柚子の香りや酸味を楽しみたいなら、果汁と炭酸水、はちみつなどを混ぜて柚子ドリンクを作るのも良いでしょう。炭酸水と混ぜると、さわやかに柚子の味を楽しめます。見た目をおしゃれに仕上げたい時は、柚子ドリンクの上に刻んだ皮を浮かべましょう。
果汁の保管方法
柚子の果汁が余ったらガラス製のボトルに入れて冷蔵庫で保管します。長期間保管したい場合は、製氷機に柚子の果汁を入れて、冷凍しておきましょう。製氷機に入れると、必要な分だけ解凍して使えるので、品質の劣化を防げます。
まとめ
柚子は柑橘系の植物の中でも比較的簡単に育てられる植物です。果実を料理や柚子湯に使えるだけでなく、花を鑑賞したり、香りを楽しんだりできるので、柚子が好きな人は栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょう。
上手く柚子が育って収穫できたら、調味料にしたり、料理に使ったりすると、食事が楽しくなるでしょう。