そのまま食べてもジュースやジャムに使ってもおいしいブルーベリーは初心者でも育てられる果樹の一つです。ここでは、ブルーベリーを地植えや鉢植えで育てる方法についてご紹介いたします。
ブルーベリーとは
ブルーベリーはツツジ科スノキ属の植物です。園芸初心者にとって果樹の栽培は難しいと言われていますが、ブルーベリーは初心者でも比較的簡単に育てられます。美しい白の花を咲かせるため、観賞用としてブルーベリーを育てる人も少なくありません。
耐寒性が低いですが、品種選びや植え付け時期を工夫すれば、北海道などの寒い地域でもブルーベリーを育てられます。ブルーベリーの実には種が入っていますが、種を植えても同じ味の実はつかないため、苗から育てたり、挿し木をしたりするのが一般的です。
ブルーベリーの品種
ブルーベリーを育てる時に知っておきたいのが「自家不和合性」という性質です。これは自分の花粉では実がつきにくい性質で、ブルーベリー以外にもリンゴなどが自家不和合性を持っています。
このブルーベリーを育てるためには、同じ系統の違う品種を近くで育てる必要があります。違う品種の花粉を受粉することで、ブルーベリーが膨らみ、収穫量も上がるのです。ブルーベリーの収穫を目指すなら、系統と品種をしっかりと確認しましょう。
日本で主に栽培されているブルーベリーは2つの種類に分けられます。
ハイブッシュ系
中部地方や東北地方などの寒い地方で育てられているブルーベリーです。ハイブッシュ系の中でも特に寒い地方で育てられるものは「ノーザンハイブッシュ」と呼ばれていて、実が大きく、品質も良いとされています。
暖地向けの「サザンハイブッシュ」はノーザンハイブッシュと比べて小さいですが、早い時期に収穫できる極早生品種として人気を集めています。
ハイブッシュ系の主な品種は味が格別のスパルタンや大きい実を収穫できるチャンドラーなどです。どの品種もブルーベリーを育てる人にとっては憧れの的ですが、栽培の難易度が高いことには注意が必要でしょう。
ラビットアイ系
温暖な気候で良く育つブルーベリーです。完熟前にウサギの目の色のように赤くなることから「ラビットアイ系」と呼ばれています。
味やサイズはハイブッシュ系よりも劣っていますが、乾燥や暑さに強いので、関東以降でブルーベリーを育てたいと考えている初心者さんに向いています。晩生品種なので、収穫のタイミングは遅いですが、収穫量は多く、ジャムやジュースなどの加工用としても活躍します。
ラビットアイ系の主な品種は中粒のティフブルーや小粒~中粒のホームベルなどです。
交雑種
違う種類を掛け合わせた交雑種のブルーベリーも存在します。例えば、ピンクの実ができるピンクレモネードはハイブッシュ系とラビットアイ系の交雑種です。また、北海道でも育つノースランドはハイブッシュ系と日本ではあまり育てられていない野生種のローブッシュ系が掛け合わされています。
ブルーベリーを育てる前の準備
初心者がブルーベリー栽培を成功させるためには、準備が大切です。ブルーベリーを育て始める前に行っておきたい準備や知っておきたい情報をチェックしましょう。
栽培時期
ブルーベリーは関東以西で10月から11月、関東以北で3月に植え付けます。それ以外の時期に苗が売られていることもありますが、植え付け時期以外に植えてもうまく育てられないことが多いです。順調に育つと、毎年4月から5月に花が咲き、6月から9月上旬ごろまで収穫を楽しめます。
土づくり
ブルーベリーを上手く育てるためには土づくりが大切です。
pH調整
ブルーベリーは酸性の土壌を好みます。植物を育てるために石灰などを使ってアルカリ性にした土ではうまく育たないため、植え付ける前にはpH測定器などで土壌をチェックしておくのがおすすめです。
ブルーベリーに適したpHは4.3~5.5程度なので、アルカリ性に傾いている場合はビートモスなどを多めに入れて土壌のpHを調整してください。ビートモスは水を吸収しにくいので、土づくりの前日に水を含ませて混ぜておくのがおすすめです。
基本の土づくり方法
庭に地植えする場合は、掘り出した土と水を含んだビートモス、赤玉土を3:5:2の割合で混ぜ合わせます。鉢植えの場合はブルーベリーの系統に合わせてビートモスを混ぜ込んで土を作ります。
ハイブッシュ系を栽培する時はビートモスと赤玉土を8:2で混ぜ合わせます。ラビットアイ系を栽培する時はビートモスと赤玉土、腐葉土を5:2:3で混ぜましょう。なお、野菜用の土は石灰などで酸度が調整されているため、ブルーベリーの栽培には適しません。
苗選び
ブルーベリーの苗は植え付け時期に園芸店やホームセンター、通信販売などで購入できます。枝が太く、全体にツヤがある苗を選んで買うと、病気などにかかりにくいです。
植え方と日々の管理
準備が整ったら、ブルーベリーの栽培を始めましょう。地植えと鉢植えの植えつけ方と日々の管理方法を解説いたします。
地植えの方法
日当たりと水はけが良い場所に深さ30~40㎝、直径50㎝程度の穴を掘ります。植えつける時はポリポットから苗を抜いて根鉢を崩してから水を含ませたビートモスで根を包んで苗を穴に入れましょう。
次に、ビートモスや赤玉土などを混ぜて作った土を入れて支柱を挿し、苗を固定します。最後にたっぷりと水をかけてから化成肥料を根本に置き、わらなどでマルチングしておきましょう。
ブルーベリーは品種の異なる苗を2本以上同時に栽培しますが、苗と苗の間隔は2m程度開けてください。
鉢植えの方法
根よりもひと回り大きな鉢を用意します。鉢の底にネットを入れて土の流出を予防し、さらに底が隠れるくらいにゴロ土を敷き詰めます。その上から、赤玉土やビートモスなどを混ぜた用土を入れて中心に苗木を置いたら、固定するように土を足しましょう。
支柱を立てて苗を固定し、有機肥料を株元に置いてたっぷりと水やりしたら、バークチップやわらなどでマルチングしてください。
水やり
ブルーベリーは乾燥するとスムーズに育ちません。しっかりと実を収穫したいなら、定期的に水やりを行いましょう。地植えで育てる場合、植えつけた年は4月から9月まで週に2回程度水を与えましょう。2年目からは土が乾いた時で問題ありません。鉢植えで育てる場合は、夏は毎日、春と秋は土の表面が乾いてからたっぷりと水を与えます。
追肥
実を付きやすくするために、5月から6月に化成肥料を追肥します。また、8月から9月にも木が疲れないように化成肥料を追肥しましょう。追肥は株元に入れるのではなく、枝の広がりよりもひと回り広い範囲の土の表面に施すのがポイントです。
剪定
ブルーベリーを生長させるためには、剪定が必要です。2月から3月に木の状態に合わせて剪定を行い、生長を促しましょう。
1年目から2年目の木は果実が付かないように枝の先をカットします。「もったいない」「実を収穫したい」と思うかもしれませんが、幼木に実を付けると、木に負担がかかって生長が止まります。3年目以降の収穫量をアップするためにも、幼木での収穫は見送りましょう。
3年目以降は収穫のために剪定を行います。伸びすぎた枝や古い枝、勢いの弱い枝をカットし、株の風通しを良くしてください。
人工授粉
ブルーベリーは自分の花粉では実が付きにくいので、他の品種の花粉を受粉させる必要があります。ミツバチなどが飛んでいる場合は虫に受粉を任せても良いですが、都会や高層階で育てている場合は人工授粉を行いましょう。人工授粉する場合は、綿棒に花粉を取り、他の種類のブルーベリーのめしべに優しく花粉を付けましょう。
ヒヨドリ対策
ブルーベリーの実が付き始めたら鳥対策が必要です。特に、ヒヨドリの被害は大きいので、実を食べられる前に防鳥ネットで木全体を覆って守りましょう。ネットを張るのが面倒な場合はかかしを使うのも良いですが、十分な効果は期待できません。
収穫
ブルーベリーはサザンハイブッシュで5月〜6月、ノーザンハイブッシュで6月〜7月、ラビットアイ系で7月〜8月に収穫できます。
果実と枝の境目である果柄の部分までしっかりと色付いてから4日程度経ったらたら、軽くひねりながら優しく収穫しましょう。収穫期は水やりの頻度を減らして木を乾燥気味にすると、糖度がアップすると言われています。
ブルーベリーの増やし方は?
ブルーベリーは挿し木をすると、株を増やせます。方法を知っていれば初心者さんでも比較的簡単に増やせるので「もっと収穫量を増やしたい」という人は挿し木にチャレンジしてみましょう。
挿し木に適した時期
ブルーベリーの挿し木に適した時期は7月から8月と11月から12月です。枝を切ってからの時間が短いほど、挿し木の成功率が高まります。なお、7月から8月に行う挿し木は「緑枝挿し」11月から12月に行う挿し木は「休眠期挿し」と呼ばれています。
緑枝挿しは温度管理が難しく失敗しやすいので、趣味で園芸を楽しんでいる人は休眠期挿しに挑戦してみましょう。
挿し木の方法
- 挿し木用の鉢に軽石と用土を入れます。
- 用土に水をかけて湿らせます。
- ブルーベリーの木から約10㎝の枝を切り、切り口を清潔なナイフで尖らせます。
- 5cm間隔で枝を挿して水を与えます。
- 乾燥を防ぐためにビニール袋で覆います。
土が乾燥しないよう、こまめに水をスプレーしましょう。スムーズに発根すると、1年程度で立派な苗木を作れます。
ブルーベリーの保管方法
ブルーベリーは収穫後、保管しても甘みが増すことはありません。できるだけ、新鮮なうちに食べましょう。保管する場合は容器に入れてフタやラップをかけ、冷蔵庫に入れていください。
収穫量が多く、食べきれない場合は冷凍にすると、半年程度保存できます。
ブルーベリーの美味しい食べ方
ブルーベリーがたくさんできたら、ジャムにして食べると美味しいです。好みの割合でブルーベリーと砂糖を煮込むだけで、絶品のブルーベリージャムができるでしょう。
夏はブルーベリーと氷やヨーグルト、牛乳、砂糖などを混ぜてスムージーを作るのもおすすめです。なお、自宅で作ったジャムやスムージーは保存料を含んでいないので、できるだけ早く食べきることをおすすめします。
まとめ
ブルーベリーは園芸初心者でも育てられる果実です。品種選びや栽培時期に注意して栽培し、おいしいブルーベリーをたくさん収穫してください。ブルーベリー栽培で園芸の基本を学ぶと、他の果物を育てる時にも知識が役立つでしょう。