秋の彼岸の頃に咲くことから彼岸花と呼ばれ、曼珠沙華の別名もある球根植物です。その赤い色から「情熱」、白い花は「思うのはあなただけ」といった花言葉がありますが、毒を持つことから迷信なども合わせて伝えられています。また丈夫な植物であることでも知られ、簡単に栽培ができます。今回は彼岸花の特徴と、その育て方について、詳しくご紹介します。
彼岸花の特徴
彼岸花は秋に咲く花ですが、秋の彼岸の頃、秋分の日を含んだ前後3日間しか花を咲かせないことから、その名がつきました。しかし今は品種改良などで、夏から秋にかけて花を咲かせるものが主流となっています。そのほかにも、彼岸花には様々な特徴があります。
普通の植物とは逆の生態
彼岸花は花が咲いたあとに葉が伸び、また秋に花を咲かせ春には枯れてしまうという、普通の植物とは逆の生態を持っています。
毒性を持っている
彼岸花の球根には毒があり、昔から田を荒らすネズミやもぐら除けとして、水田の近くに多く植えられていました。しかし球根を長時間水にさらすことで無毒化することができるため、非常時の食料ともされていました。球根をそのまま食べると吐き気や下痢、重症化すると麻痺を起こすことがあります。
大雨のあとに多くの花が咲く
秋の乾燥した日が続いたあとに、大雨が降ると彼岸花が一斉に花をつけることから、「雨後の彼岸花」とも呼ばれています。
彼岸花の色は赤だけではない?
彼岸花の原種には、赤だけではなく白や黄色、オレンジ、ピンクなどの花もあります。日本では白の彼岸花、黄色の彼岸花があり、それぞれ白曼珠沙華やショウキランと呼ばれています。
彼岸花の育て方〜土づくり・球根の植え付け〜
彼岸花は多年草で、植えっぱなしでも数年は花を咲かせてくれます。植え付ける際には、地植えがおすすめですが、鉢植えでも育てることは可能です。
地植えの際の土作り、植え付け
彼岸花は根が伸びるため、植える際にはなるべく深く耕し、川砂や赤玉土などを混ぜて水はけを良くします。植え付けのときに肥料を与えれば、そのあとは特に追肥をしなくても育ちます。
球根の植え付けは、球根の間は20cmから30cmほど空けて植えるようにします。これは彼岸花の球根が分球で増えていくためです。3,4年は動かさずそのまま育てますが、分球が進んできたら、球根を分けて植え替える必要があります。植え替えの目安としては、球根が密集し、地表に上がってくるので、そうなったら球根を分けるようにします。
球根の植え付けは、球根が休眠期に入る7月から8月の上旬頃までにおこない、地植えの場合は地面から球根の高さ一つ分深く掘って埋めます。
鉢植えの際の土作り、植え付け
鉢植えにする場合は、6号の鉢で球根2個程度が目安です。鉢の底は石やゴロ土を使って、水はけを良くし、固まりにくい土か、球根用の腐葉土がおすすめです。プランターでも育てることは可能ですが、なるべく根が広がるよう深めのものを選びましょう。
球根の植え付けは、地表すれすれに埋めるようにします。鉢植えでも球根は地植えと同じく休眠期の7月から8月上旬に植えるようにします。
彼岸花の育て方〜肥料・水やり・管理〜
彼岸花は肥料や水やりがそれほど必要ではありません。水はけが良く、日当たりが良ければ問題はありません。肥料は球根に与えることが大切なので、植え付けのときに土に混ぜ込むようにします。
彼岸花の生長期は、冬から春にかけてで、花が枯れた後葉が生い茂ります。この時期には土が乾いたらしっかり水をやるようにしましょう。ただし水のやり過ぎは球根を弱らせてしまいます。しかし夏場など乾燥しやすい時期には、注意が必要です。基本的には寒さや暑さに強いので、土の乾きに注意すれば、特に問題はありません。
花が咲いたあとは、球根を育てるために花を茎から切り取る「花がら摘み」をおこないます。彼岸花の種類によっては、種をつけないものもあるため、花だけを摘み取っても問題ありませんが、花のあと生えてきた葉や茎は、枯れたあと肥料になるので取らないようにしましょう。
彼岸花を育てる際に気をつけたいこと
彼岸花を育てる際には、いくつか注意が必要です。
球根をじめじめした状態に置かない
球根を植えるときに乾いているからといって、大量に水を与えると軟腐病にかかることがあります。こうなった球根は治療ができないので、注意が必要です。
生長期の雑草に注意する
葉が生い茂る秋から春は、葉を十分に日光にあてる必要があります。そのため雑草などはできるだけ取り除いた方がいいのですが、球根が増えて葉が密集するようになれば問題はあまりありません。特に地植えの場合は、普段の雨だけで十分に育ちます。ただし花の咲く時期には適度な、水やりをおこなうようにしましょう。
葉が枯れている時期が長いので札などをつけておく
彼岸花は花を咲かせる時期が比較的短く、また葉が枯れたあと球根が生育する時期が長いため、地植えや鉢植えでも表面的には何も生えていない状態になることがあります。他の植物などと区別をつけるため、目印になるようなものや、札などをつけるようにしましょう。
生長期は日当たりと水やり、肥料を忘れない
植え付けや植え替えは休眠期におこないますが、葉が生い茂る生長期には日当たりや乾燥に注意しましょう。追加の肥料を与えるのも生長期が適しています。
彼岸花の種類によっては、冬の寒さに弱いものもあります。鉢植えにした場合は、置き場所に気をつけるなどして対策を立てるようにしましょう。また地植えの場合手入れはあまり必要ありませんが、生長期にはこまめに土の様子を見るようにしましょう。