香りの強い野菜、ニラ（韮）はユリ科ネギ属の多年草で、「古事記」にも登場するほど日本ではむかしからなじみの深い植物です。「古事記」には「加美良（カミラ）」と記述されている他、万葉集では「久君美良（ククミラ）」、他の書物でも古くは「古美良（コミラ）」などと呼ばれてきたニラですが、その後段々簡略化されて「美辣（ミラ）」になり、「ミ」の音が「ニ」に転じて現在のニラに落ち着いたということです。
ちなみに美辣には「食べるとおいしい」という意味があります。「ふたもじ」という別名もあるこのニラ、あの匂いの強さからは想像できないような清楚で美しい白い花を咲かせますので、庭の片隅に植えておくと野菜としても観賞用としても楽しめます。庭がない人はプランターでも十分に育ちますので、園芸が好きな人は挑戦してみませんか？
ニラを植える準備
ニラには葉の幅が広い大葉と幅が狭い小葉とがあります。家庭菜園には食べでのある大葉の方がよいでしょう。ニラを種から植える場合には、深めの箱などに堆肥の入った栄養分のある畑の土を入れ、棒などで10センチ間隔に筋目を付けます。種を筋目のところに蒔いていき、上からごく薄く土をかけます。土が乾いたら水をやるようにしてください。ニラは10日から2週間程度で発芽します。
発芽に適した気温は10℃から25℃なので、春か秋に蒔くとちょうどいいでしょう。苗が20cmぐらいのものが高さになったところで定植しますが、定植する場所の土はあらかじめ用意をしておく必要があります。定植の2週間前には1平方メートルあたりに苦土石灰100gと堆肥3kgを撒いて土を耕しておき、1週間前になったら化成肥料50～60gを入れて畝を作っておきます。苗は4～5本ずつにまとめ、20cm間隔で植えます。
プランターでのニラの育て方
プランターでニラを育てる場合は、底が見えなくなる程度に鉢底石を敷き詰め、粒状肥料を混ぜた培養土を入れます。表面を均したら20cm間隔に穴を開け、ニラの苗を植えていきます。土の表面が乾いたらたっぷりと水をやるようにしますが、水のやり過ぎには気をつけなければなりません。鉢植えなら10号鉢に2～3株植えることができます。
ニラのお手入れ
ニラは比較的丈夫で手のかからない植物ですが、畑あるいはプランターに定植して20日ほど経ったら根本に土寄せします。肥料は週に一度、500倍に薄めた液体肥料をやるとよく育ちます。周囲に生えてくる雑草はこまめに取り除きましょう。主な病気としては萎縮病や乾腐病、さび病などがあります。またアブラムシ、アザミウマなどの害虫が付くことがありますので注意しなければなりません。
だいたい植えてから2か月経った頃が食べごろですが、1年目は収穫を控えめにした方が株がよく太って、2年目以降に収量が増えます。夏になると花茎が出て白い美しい花を咲かせますが、花を咲かせると株が疲れて太れませんので、蕾のうちに摘んでおくことをおすすめします。蕾は花ニラとして食べることができ、葉ニラよりも匂いが弱く、柔らかい食感です。
いよいよニラの収穫
収穫の際には根こそぎ抜いてしまわずに根元から3～4cmの所でハサミで切るといいでしょう。一度にそれほどたくさん食べるものではないので、少しずつ収穫するのがおすすめです。収穫したニラは時間が経つとしなびてきますので、洗って新聞紙にくるみ、冷暗所に保存するのが一番です。
刈り取った後の株で黄色のニラも簡単にできますので試してみるといいですね。黄色のニラは切り取った株の上に箱をかぶせて作ります。日光が当たらないとニラは黄色に成長します。食用の高さまで成長したら箱を取り除き、収穫しましょう。輪ゴムなどで根元をまとめ、簡単に水洗いをして土を落とし、日光が強い時間に3時間ほど天日干しにすると鮮やかな黄色になります。弱い日光に長時間当てると緑色になってしまいますので注意してください。
ふつうの緑色のニラと違い、葉が柔らかくて炒め物などにしても美味です。黄ニラには普通のニラにはない成分が含まれており、脳の老化を食い止める効果があるとも言われています。黄ニラが八百屋さんの店頭に出るのは珍しく、売っていても通常のニラよりかなり割高ですので挑戦してみる価値はあります。
ニラは野菜にしては珍しく多年草ですので、越冬させて翌年、あるいは翌々年も収穫することができます。放置しておくとやせ細っていきますので、追肥は忘れないようにしましょう。11月以降になると地上部が枯れてきますので、これをハサミで刈り取ります。土の表面が隠れるぐらいに堆肥をかぶせておくといいでしょう。3年目になると根がたくさん出て株が弱ってきますので、掘り出して株分けをし、別の場所に植え替えるとまた元気になります。
ニラには身体を温める効果があり、カロテンも多く含まれているので、風邪の予防などにもよく効きますから、毎日の食卓にもっと積極的に取り入れたいものです。
