芝桜の育て方

芝桜は地面を這うように広がり、満開の時期は花のカーペットを敷いたように圧倒的な存在感を見せてくれる花です。栽培が難しそうに見えますが、耐寒性や対暑性があり、病気や害虫の影響も受けにくいため、園芸初心者でも簡単に育てられます。

今回は芝桜の植えつけ方や管理方法、挿し木や株分けで芝桜を増やす方法などについて解説いたします。


芝桜ってどんな花?

芝桜はハナシノブ科フロックス属の常緑性多年草です。芝のように地面に広がり、桜のような切れ込みのある可愛い花を咲かせることから「芝桜」という名前で親しまれていますが、モノフロックスと呼ばれることもあります。

芝桜の原産地は北アメリカです。現在も五大湖周辺の乾燥した場所や森林地帯に自生しています。日本には、江戸時代末期から明治時代初期に渡来し、観賞用の植物として各地で栽培されています。

開花時期は4月から6月上旬ごろ。栽培環境によって差はありますが、開花期間は1~2週間程度でピンクや白、紫、青などの小さな花を付けます。秩父や河口湖周辺では、春になると一面に咲いた芝桜の観賞を楽しめると評判です。

芝桜はどんどんと広がる常緑性の植物で、根が密集するため、土の流出を防ぐためにも使われます。花壇の縁などに芝桜を植えれば、きれいに土を守れるでしょう。

地面を覆うので、グラウンドカバーとしても役立ちますが、芝のように強くはないため、人に踏まれる場所に植えるのは避けてください。

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芝桜の育て方・管理

芝桜は栽培難易度が低い植物です。園芸初心者でも比較的簡単に育てられるので、毎年芝桜を楽しみたい人や存在感のある芝桜で花壇を華やかにしたい人は栽培にチャレンジしてみましょう。芝桜の栽培方法についてご紹介いたします。

苗から育てる

芝桜の種は市場に流通していません。そのため、芝桜を栽培したい場合は、苗を使います。

春(3月~5月頃)や秋(9月~10月頃)になると、ホームセンターや園芸店などで苗が売られるので、好みの品種を選んで買いましょう。店舗で苗が見つからない場合は、インターネットなどでも購入できます。

芝桜の苗の値段は1株150円から500円程度です。茎がしっかりとしていて葉の色が濃く、害虫が付いていないものを選ぶと丈夫に育ちやすいしょう。なお、芝桜は適した環境で育てると、1株につき約50㎝程度広がります。

苗を購入しすぎると、植える場所がなくなるので、購入前に必要な苗の量を考えておくのがおすすめです。

場所の選定

芝桜は水はけの良い場所に植えます。乾燥には強いですが、加湿には弱いため、水が溜まらない場所を選びましょう。風通しの良い傾斜地や石垣などに植えると、ムレて枯れる心配がなく、生長した時に美しいです。

また、日当たりにも注意が必要です。一日のうち、長時間日陰になる場所に芝桜を植えると、茎が間延びして株が弱くなります。弱くなった芝桜は病害虫に負けたり、花の数が減ったりするので、できるだけ日向になる時間が長い場所に植えるのが良いでしょう。

寒さに弱い植物は多いですが、芝桜は耐寒性に優れているので、冬も他の季節と同じところで育てて大丈夫です。また、冬越しのための防寒対策も必要ありません。

土づくり

育てる場所が決まったら、土を作ります。芝桜の栽培に適した土の作り方を鉢植えと地植えに分けてチェックしましょう。

鉢植え

芝桜の栽培には水はけの良い土が適しています。鉢植えで育てる場合は、水が溜まらないように赤玉土、腐葉土、川砂を6:2:2で混ぜるか、市販の草木用培養土と川砂を8:2で混ぜましょう。

地植え

地植えの場合は、水はけの良い日向であれば、土作りをしなくても育ちます。水はけが心配な場合は植え付けの1週間程度前に土を掘り起こし、堆肥や腐葉土などを2~3割程度混ぜておくと良いでしょう。

植え付け方法

芝桜は秋か春に植え付けます。栽培地域によって細かい時期はことなりますが、秋であれば9~10月、春であれば3~5月に植え付けましょう。

栽培難易度が低いため、どちらの季節に植えても問題ありませんが、おすすめは秋です。秋に植えれば雑草の管理をしやすいので、あまり手間をかけなくても翌年の春に芝桜の花を楽しめるでしょう。

ただし、植え付け直後に霜が降りると、芝桜が枯れてしまうことが多いです。東北地方や北海道など、寒い場所で芝桜を育てるなら、9月の初めか春に苗を植えてください。

鉢植え

鉢植えする場合は、苗の根回りよりもひと回り大きい鉢を用意しましょう。底から鉢底ネット、鉢底石を入れて、作った土を加えます。ポットから優しく苗を取り出し、絡まった根をほぐしてから根を植え付けましょう。

根に土をかけたら、根と密着するように軽く土を抑えて、たっぷりと水を与えます。一つの鉢やプランターに複数の芝桜を植える場合は、ムレを防ぎ、生長を促すために、株間を15~20㎝程度開けてください。

地植え

地植えする場合は、あらかじめ、芝桜を植える部分を耕しておきます。土が柔らかくなったら、ポットから苗を取り出し、根を優しくほぐして植え付けましょう。鉢植えする場合と同様に、軽く土を抑えて密着させ、たっぷりと水を与えてください。なお、地植えする場合は、20~25㎝程度株間を開けると、きれいに芝桜が広がります。

水やり

芝桜は加湿に弱いです。根が張るまでは乾燥に注意する必要がありますが、その後は水を与えすぎると、枯れてしまう恐れがあります。頻繁に水を与えるのは控えて、鉢植えの場合は表面が乾いた時のみに水やりしましょう。

地植えの場合は、極端に晴れの日が続かない限り、水やりをしなくても問題ありません。しかし、水分が不足すると、スムーズに生長しないので、雨が降らず、地面が乾燥している時はたっぷりと水を与えましょう。

なお、高温期の水やりには注意が必要です。気温が高くなってから水を与えると、土の中で水が熱くなるので、夏場は早朝か夕方に水やりをしてください。

追肥

芝桜を生長させるためには、肥料も必要です。植えつける時は緩効性の肥料を土に混ぜ込んでおきましょう。植え付け時に肥料を与えた場合は、花が咲く前の2月~3月と花が咲き終わった6月~7月に緩効性の化成肥料を少量与えてください。

即効性の肥料は肥料やけの恐れがあるため、避けた方が無難です。なお、肥料はチッソ分の少ないタイプを選びましょう。チッソ分は葉を生長させますが、与えすぎると花の量が減るため、花の観賞を楽しむ芝桜にはあまり必要ありません。

草取り

雑草の勢力が強いと、芝桜の生長が妨げられます。地植えの場合は、スギナやカヤなどの生命力の強い雑草はできるだけ取り除いてから植えましょう。葉や花が広がるまでは、細かい雑草が生えやすいので、こまめに草取りをしてください。芝桜が広がると、日光が当たらなくなるため、草は目立たなくなります。雑草が目立った時にのみ、草取りをすると良いでしょう。

目土

長期間、同じ場所で芝桜を育てていると、根が土の表面に浮き上がってきます。根が浮き上がって株元の葉の数が減ったら、上から土をかける「目土」を行うのがおすすめです。

茎の半分が埋まるくらい土をかけ、軽く押さえて根と土を密着させましょう。最後に水をたっぷりと与えてください。芝桜は茎の節から新しい根を出すので、目土を行うと新しい根が付きやすくなります。根が増えれば、乾燥しにくくなるので、丈夫な芝桜が育つでしょう。

病害虫

芝桜は病害虫に強いため、屋外で育ててもほとんど病気や害虫の影響を受けませんが、暑い季節はハダニが発生することがあります。ハダニは植物を吸って栄養を奪う害虫です。

ハダニが発生すると、葉の表面などに白い斑点や傷のようなものができるので、薬剤を散布して対処してください。ハダニは水に弱い性質を持っているため、暑い時期は時々、株の上から水をかけておくと、発生を予防できます。

植え替え

芝桜はどんどんと大きくなる植物なので、鉢植えで育てている場合は、植え替えが必要です。1~2年に1回程度、根が詰まってきたと感じたら、ひと回り大きな鉢に植え替えしてください。

植え替えの方法は植え付けの時と同じです。鉢底ネットや鉢底石を入れた新しい鉢に土を加えて、古い鉢から取り出して根をほぐした芝桜を植えつけましょう。下部が大きく育っている時は、植え替えと同時に株分けすると、芝桜を増やせます。

地植えの場合も、3~4年に1回は植え替えするのがおすすめです。古なった株は茎がゴツゴツして花の数も減るので、株分けや挿し木で増やした苗と植え替てください。

また、古くなった株も傷んだ部分を剪定し、ゴワゴワになった部分を土に埋めるように植え直すと、復活することがあります。

刈り込み

花が茶色くなったら、枯れた花を切り落とし、草丈が半分くらいになるように刈り込みます。刈り込むと風通しが良くなるので、蒸れやすい梅雨の時期でも芝桜が枯れにくくなります。さらに、刈り込むと枝分かれが進むので、草丈の低い花の絨毯を作れるようになるでしょう。

芝桜を刈り込む時は剪定ばさみや草刈り機を使うのが便利です。ただし、草刈り機などで根元から剪定すると、生長が遅くなってしまうので、切りすぎには注意してください。

芝桜の増やし方

芝桜は挿し木や株分けを行うと、株数を増やせます。芝桜の増やし方を確認してみましょう。

挿し木

芝桜の挿し木は9月下旬~10月下旬に行います。5㎝程度の長さに切った茎の下から2㎝程度に付いている葉を取ったら、肥料分の少ない土を入れたポリポットに挿して、たっぷりと水を与えましょう。発根するまでは、乾燥に気をつけてください。

20~25日程度で発根して根が十分に育ったら、鉢や花壇などに植え付けましょう。

株分け

芝桜の株分けは6月か9月~10月に行います。優しく株を掘り上げて1株につき2~3芽が付くように、手やナイフなどで根を分けましょう。分けた株を鉢や地面に植え付けてたっぷりと水を与えれば、芝桜が増えます。

気温が低い時期は根が張らず、株分けに失敗したり、花が少なくなったりするので、時期には十分注意してください。

まとめ

絨毯のようにピンクや白、紫などの可愛い花が広がる芝桜は庭を華やかにしたい時にぴったりの植物です。意外と簡単に育てられるので、園芸初心者の人も栽培にチャレンジしてみましょう。植えつけに成功すると、毎年春にきれいな花を楽しめます。

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